緋文字

緋文字 (1957年) (新潮文庫)

緋文字 (1957年) (新潮文庫)

・粗筋

不倫の咎により公衆の面前で晒し者にされた上に、緋文字()を生涯衣服に付けなければならないという公開羞恥プレイを宣告された『緋文字の淑女』へスター・プリンと、その1人娘である『天衣無縫』パール嬢が色々すったもんだした挙句、へスター・プリンの不倫相手であった『聖なる魔人セイクリッド・ブラックマン 』アーサー・ディムズデイル牧師と、そのディムデイルへの復讐に及んだへスター・プリンの元夫『究極の放置プレイアルティメット・ニグレクト』ロジャー・チリングワークス、との因縁に決着を付けようとする物語。

多少偏っているかもしれないが苦情は受け付けない。こんな内容だったんだ。

・感想

不倫相手はディムズデイルさんだとわかっていながら身体的には何も手出しをせず、獅子身中の虫として七年間に渡ってディムズデイルさんの間近で地味なプレッシャーをかけ続け精神を蝕んでいくという新手の放置プレイを試みたロジャー・チリングワークス大先生。一体どれだけ心にブラックホールを作ればそんな暇なことが出来るのか軽く問い詰めたい所だが、とにかく彼はどうかしている。「素直に殺してやれよ」とへスター・プリンに言わせるその陰湿さは折り紙三十枚どころの騒ぎじゃない。お医者様兼親友がまさかリベンジャーだとは思わない哀れなディムズデイルさんは真綿で首を〆られながら七年間自身が罪人であるという意識を忘れられず、無限ループに引っ掛かってしまう。

前提:ディムズディルさんの言葉が病んだ人の心を打つのは彼自身が病んだ心の持ち主だからである。Butディムズディルさんの言葉に感動しまくった人々は「ディムズディルさんは神クラスに清廉潔白だから神クラスの演説ができるのだ」と勘違いする。この現実と評判の反比例にディムズディルさんは苦しむ。

ディムズデイルさんが苦しめば苦しむほど、その言葉は人々を魅了できる

ディムズディルさんの言葉が人々を魅了すれば魅了するほど、人々はディムズデイルさんのことを更に褒め称える

人々がディムズディルさんを褒め称えれば褒め称えるほど、ディムズデイルさんは現実*1と評判*2のギャップの前に更なる苦しみを味わう。

ディムズデイルさんが苦しめば苦しむほど(以下無限ループ)

なんか読んでいる内に「晒し者の方がマシだよな」って思えてきた。無限ループから救われる為に最後公開露出プレイに走らなければならなかったディムズディルさんが不憫過ぎる。いや、ある意味ビクトリーエンドなんだけどさー。
結論:ディムズディルさんはよくやった。

*1:罪深い罪人

*2:清廉潔白な聖職者