闘蟋―中国のコオロギ文化③
とりあえず最後…なんだけどさ、問題が一つ。なんとあの海馬コーポレーションが中国蟋蟀業界に進出している疑いが見えてきたんだけどどうすべきだろうか。どうすべきだろうか。
・上海人の脅威
年金で充分に闘蟋を楽しむことができるであろうに、七十代近くになって大変な事業を始めようという。それは商才に長けた、頭の切れる上海人の特性なのだろうか。彼はこれまで出会ったことのないタイプの
蟋蟀迷 であった。
とりあえず僕はまだ
・コオロギ狩り
彼等(=飛虎隊)はコオロギ捕りの邪魔になるものは、ことごとく排除する。稲は根こそぎにし、瓜は放り投げる。瓦礫の下にコオロギが入れば地面を掘り返す。
アンダーグラウンド・コオロギバトルにおいては賭けの道具にもなる…そんなコオロギは人を狂わせる魔力を持っているらしい。陰虫と呼ばれるコオロギとはいえ、それを扱う人間には明暗があるということなのか。
どうでもいいことが、飛ぶ虎が蟋蟀を追い立てる光景を想像して一人悶えていたのは公然の秘密。
・コオロギの養生
「清朝宮廷秘伝の処方」は、もっと手が込んでいる。同量の
何首烏 *1、牛膝 *2、五加皮 *3、干蓮草 *4、侯姜 *5、伏令 *6、川続断*7、
甘草 *8を、前述の荷葉露 もしくは清水に十日から二週間漬けて、成分を侵出させる。初秋にこの侵出液を虫に与えると、晩秋の老化や食欲減退をかなり遅らせることができるというのだ。*9
ついでに書いておくと、あと中国ではコオロギを風呂に入れるらしい。
…もうツッコミとかいいよね。僕がここで何を言いたいかぐらいもうわかるよね。ね!
・コオロギの疾患
- 暑気あたり
- 消化不良
- 便秘
- 長鳴き
- 冷え
- 痴呆
- 失乳
百歩譲って1〜5までは認める。だがコオロギの「痴呆」と「失乳」ってなんなんだ。コオロギの精神科医とかがいるとでも言うのか。「アルツハイマーのコオロギを介護する為の条件10」とかそんな論文が出ているとでも言うのか。いや、ありそうだけど。ここまでくると普通にありそうだけど。むしろつっこめばつっこむ程こっちが異文化を理解できない、頭の固い無粋な人っぽくみえてくるんだけど…でも、でも一回は突っ込んで置きたい…!純粋に粋なものを味わうためにはまず、後腐れのない1ツッコミが必要なのではないだろうか。
・コオロギの×××
- 美人で処女が伴侶の条件
- コオロギの纏足
とりあえず処女の方が雄への喰いつきがいいらしい。で、下の纏足云々については…せっかくだから『エロチックな足―足と靴の文化誌/ウィリアム・A. ロッシ』辺りで勉強するといいんじゃないかな。アレ結構面白いよ。中国の纏足は金蓮とも呼ばれ、セックスライフの充実というレベルの高い(?)目的を有していたらしい…って何の話だっけ。ああ、コオロギだ。コオロギ。とにかく闘蟋とか纏足とかやってる中国人と一戦交えるときは気をつけろって話だ。何を気をつければいいのか全くわからないし、それ以前に気をつける箇所を間違えている気もしなくもないが、とにかくなんか気をつけろ。気をつけるんだよ。
・海馬社長何やってんですか。
わたしが見たなかで一番印象深かったのは、北京のとある闘蟋会場に、颯爽とアタッシュケースを下げてやってきた一見ビジネスマン風の青年だ。メタリック・グレーのアタッシュケースを開けると、片側に発泡スチロールがきっちりはまっており、八つの壷が、壷形に几帳面にくり抜かれた穴にすっぽり収まっていた。
そのアタッシュケースに『KC』の文字が刻まれていないかが心配だ…っていうか海馬社長なんじゃないの。いや絶対海馬社長だよ。そんなことする人類は海馬社長ぐらいしか考えられないって。海馬社長!
或いは海馬社長の生き別れの兄弟の1人にたまたま蟋蟀に嵌った中国人がいたのかもしれないが、いずれにせよこの件は『KC』と無関係じゃないような気がする。…なんか凄く嫌な予感がするんだ。
もし何時か近い将来、科学技術によって人工的に生み出された凶獣『