個人的な美学の問題。

あの美学の欠片もない何時ぞやの「エムゼロ感想」*1が未だに頭にこびりついている。あの「書くことを何も思いつかなかったからなんか適当に捻くりだした結果、必ずしも本意ではないことを言ってしまったっていう例のアレ」だ*2。アレが未だに僕の頭から離れない。おかげでここ数日、暇な時間は脳内エムゼロ会議が連続開催という酷い有様。なんかそろそろ仮説の確認の為コミックスを買ってしまいそうな勢いだったりする。そうだ、別に地味だから詰まらないわけじゃないんだ*3。それを言ったら僕が大好きなマジックマスターはどうなるって話だ。アレすっげー地味だぞって話だ。

つーわけで、「エムゼロのクラスマッチが何故僕の中で空気なのか」について色々考えてみようってのが今日の趣旨。多分ダラダラ書くから、それでも見たいっていう暇な人はさっさと覚悟決めるがいいさ。


【僕がエムゼロのクラスマッチを二酸化炭素だと思う理由】
まずは僕がエムゼロに対して持っている基本的な印象を二つ。

  1. 主人公・九澄大賀の「唯一魔法が使えない」という設定及び基本的な動かし方は○
  2. サブキャラの個性が薄い。

主人公はいい。よく出来ている。ただサブキャラがあまりに弱いというのが僕の印象。そういえば巷においてエムゼロのサブキャラがブレイクしたという話は聞いた事がないし、これは案外皆思っていることかもしれない。*4

恐らくこれは初期設定が大きいのだと思う。①主人公は魔法が使えない②主人公は周りからゴールドプレートとして扱われる存在…ということを考慮して、叶先生は意図的に周りの曲者度を2ランクぐらい落としているのではないかと推測する。元々露骨に濃いキャラを描く人ではない…とは思うが、あの初期設定で(まだ学園についての知識に乏しい)九澄大賀を動かすとなるとあまり凶悪なキャラは出せないであろうし、それでもある程度はしょうがない…とは思う*5

しかし、事ここに及んで多人数戦となるともはやそんな甘い事は言ってられないというのが僕の意見。まず、この件について僕の率直な気持ちを現すとするなら大体こんな感じになる↓

叶恭弘…連載3本読切13本入選1…創作スタイルは堅実にして精緻。だが過程を重視するあまり時として対局を見失うことも多い。一瞬でも破綻がちらつけば直ぐに埋め直し、今まで作品を内部から崩壊させかねないほどの強キャラを出したこともなければ、見るからに扱いにくそうだがその一方で魅力的な追加設定を放りこんだこともない*6。」
「僕の作品が多人数戦に向いていないというのか!」
「残念だが…君にはその資質が欠けていると言わざるを得ない。」

多人数ゲームにおいてもっとも大事なことは―ある意味では言うまでもないことだが―「多人数」という要素と「ゲーム」という要素でどれだけ魅せられるか…という事だと思う。

まず前者について言うと、多人数戦においては主役だけキャラが立っていても仕方がない。むしろ「仮面ライダー龍騎」のように敢えて主人公のキャラを薄め「スーパー弁護士」や「脱獄犯罪者」といった普通では出しづらいやたら尖ったサブキャラを連発するぐらいで丁度いい場合すらある。例えば大昔子供達を魅了した正義超人軍団VS悪魔超人軍団の際、もしもキン肉マンの仲間が全員テリーマンだったとしたらキン肉マンは即行で打ち切られていただろう*7。少し極端だとは思うが大体そんなところだ。

で、次に後者についてだが、こちらは基本ルールを聞いた瞬間どれだけ読者の興味を喚起できるか、或いはどれだけ懐の深いルールであるか…がポイントとなる。まあこれについては説明せずともわかるだろう。軽く例を出すと「限定じゃんけん」や「少数決」は単語レベルで惹き付けられるだろって話だ。これら二つの要素の内、両方或いは一つでも強く満たしていれば「多人数ゲーム」を扱った面白い創作が生まれるのだと思う。ここまでが前提。無論どちらについてもちゃんと動かせることを前提とした前提。ややこしーなオイ。*8

だがこの前提に照らし合わせるとエムゼロは厳しい。まず前者について言うと前述の通りC組のメンバーは皆「九澄大賀が魔法0でもやっていけるようにある程度アクを抜かれた?キャラ達」であり、結果として薄い。実に薄い。もっとも九澄大賀を中心に話を回す今までの展開ならそれでもよかったかもしれないが、しかしチーム戦となると彼らの個性の薄さは話を回す上であまりに不適格だと思う。下手をすれば主役を食ってしまう程の脇役が僕の知る限り一人もいないのだ。

後者について言うと…もはや言うまでもないような気もする。「魔法の使用が有り」という点を除けばアレはごく普通のゲームであり、事実似たようなゲームを僕は子供の頃やったことがある。勿論実際に僕らが遊ぶ場合においては、アレはある程度魅力的なルールなのだが、現実をそのまま創作に移すと酷くつまらないことは既に自然主義文学が証明しているところであり…つまりはあくびが出るって話だ。現実にありそうなくらいルールが緩く、創作上どーとでもなりそうであるが故に、読み手としては正直どうでもいいルールになってしまっているのだ。となると後はこの漫画ならではの要素である「魔法」で如何にゲームを盛り上げられるかにかかっていると思うが、この肝心の魔法についても残念ながら個々の魔法の設定があまり練られていない為に正直微温いと感じる。尚、練られていない理由は簡単。「主人公が魔法を使えない」という縛りは、実は「主人公に魔法を使わせなくてよい」という免責事項でもあり、従って九澄大賀中心に回す今までは魔法設定を細かくする必要性が薄かったのだ。だが多人数戦をやるにあたってはコレは不味い。この際主人公そっちのけで魔法設定を深めるぐらいでなければ魅力など到底生まれる筈がなかったのだ…にも関らずそのままクラスマッチに臨んでしまった。これでは魔法戦が盛り上がるとは思えない。九澄大賀のエムゼロ描写ぐらいにしか見所がないとすら言っていい。

要するに「キャラもない」「設定もない」では僕の興味を引く多人数戦になるはずがないという話。それにそもそもの問題としてまだ「一人歩きしかねない新キャラ」或いは「扱いにくい追加設定」を出してもいないのに「構築力が高い」というのは何か間違っている気がする*9。とはいえ、ここまでくるともはや個々人の価値観レベルの問題なのかもしれない。

とりあえずはこんなところ。結論としては…そうだな…無駄に強烈なライバル軍団を出せば面白くなるんじゃないの(投げやり)。もうC組やルールに期待するのは無理そーだし。

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うーん、どだろ。まだツメが甘いかな。でももう疲れたよ。これからは発言に気をつけよう。うん。

*1:正確には「ジャンプ12号」におけるエムゼロの感想。

*2:ジャンプ感想」においてレビューされる作品は本人が積極的にレビューしたい作品ばかりとは限らない為往々にして「そういうこと」が起こりがちなのだが、だからこそ事前に「そういうこと」を先読みし、未然に防がねばならなかった。要は僕が未熟だったってことだ。

*3:「地味で詰まらない」という印象は単なる結果として―良いところが見つからなかった結果として―生まれたに過ぎない

*4:といっても僕は最近ジャンプ感想を読まない上に巡回も減っているので、これについては誤解かもしれない。注意すべし。

*5:あまり「面白い」とは思わなかったのも事実だが。

*6:他の作品あんま知らないので、かなり無茶言ってる気がするがどうなんだろ。

*7:いや、テリーマン好きだけどさ。

*8:内容としてはわりと無難なことを言ってるとは思うが。

*9:勿論「主人公が魔法を使えない」という初期設定は◎とした上での話だ。