概要と呼ぶべきか感想と呼ぶべきか、それが問題だ

 先日最終回を迎えたようですが、僕はこの漫画のことをほとんど知りません。『ジャングルの王者ターちゃん』を昔描いていて、その後はレスリング漫画で打ち切られ、狂四郎なんちゃらでグロめの作風だった人と同一人物が描いている漫画であるということぐらいしか知りません。具体的な読書経験としては、書店で2〜3回パラ見したことがある程度です。さて、そんな人間がひょんなことからこの作品について軽く調べてみたくなり、wikipediaを開いた場合、気をつけるポイントはあるのでしょうか。試しに、ちょっと見てみましょう。

2006年7月29日 (土) 19:47
[概要]
作者の持ち味とも言える下ネタを中心としたギャグ、そしてギャグとシリアスの織り交ぜる絶妙なバランス感覚は健在であり、全体としてはシリアスな内容である物のエンターテイメントと言う漫画の本質は見失っていない。また前作『狂四郎2030』と同様に、極論的な所はある物の戦争・人間の欲望・現代社会といった物の本質的な醜さを鋭く描き出しており、こうした醜さを直視した上で織り交ぜられる反戦メッセージは説得力も強く、読者を深く考えさせる事も多い。

 ベタ褒めです。wikipediaでここまで露骨なベタ褒めをやっていいのだろうかというほどにベタ褒め。しかもさらっと、「漫画の本質=エンターテイメント」なる、いかにも物議をかもし出しそうな定義まで持ち出しています。いつ、どこで、誰の合意によってそんなコモンセンスが生まれたのかはわからりませんが、とにもかくにも中々の雄度です。まぁ、裏を返せばそれほどまでに素晴らしい作品……

2006年8月6日 (日) 02:36
[概要]
作者の持ち味とも言える下ネタを中心としたギャグ、そしてギャグとシリアスの織り交ぜる絶妙なバランス感覚がなくなり、全体的に暗く、残虐なばかりが目立つ作品となってしまった。また前作『狂四郎2030』に見られた迫力ある戦闘シーンは影を潜め反戦メッセージが無駄に強くなっており、物語としての面白さを損ねているという批判も根強い。

 おぉっと、今度は真逆の評価。「評価」という言葉が最初に浮かぶ時点で何かがおかしいような気もしますが、まぁ、人間の書くものだからね。しかし、それにしても真逆。清々しいほどに真逆……

2007年11月5日 (月) 20:28
[概要]
作者の持ち味とも言える下ネタを中心としたギャグ、そしてギャグとシリアスの織り交ぜる絶妙なバランス感覚を踏まえつつも、新しいジャンルの境地を切り開いた傑作である。

2008年2月14日 (木) 12:10
[概要]
頻繁に描写される醜悪な性描写に加え、なんらカタルシスをもたらしえない展開や、作者の偏向思想が浮き彫りにされていることなどから、前作である狂四郎のような展開を期待したファンからは落胆の声が上がる事が少なくない。

 wikipediaの「概要」って面白いですよね。民事訴訟法でいうところの、弁論主義の例外とかその辺*1の愉快さが見え隠れ。両の極を壮絶にいったりきたりするその様は中々に壮観。影響力の強い文字媒体においては、人はこうも必死になれるのです。私たちは、その必死さを見誤るべきではないのです。因みにこの概要、最新版の2008年5月1日 (木) 09:43においては実に平和な表現に収まっていますが、最終回というキラーワードがもう一波乱を呼び込むかもしれません……が、それはまた別のお話であり、僕の興味からは最早外れているのです。では、この世の平和を祈って。南無。

*1:いや、全然違うと言えば全然違うんだけど。