両性具有―ヨーロッパ文化の中の「あいまいな存在」の歴史―

両性具有―ヨーロッパ文化のなかの「あいまいな存在」の歴史

そういえば両性具有の本を図書館で借りていたことを思い出したので、ここで一回特集しておくが…胡散臭い。色々勉強になるような気もするが基本的に胡散臭い。多分根底が既に胡散臭いのだろう。何処に話が展開しようと胡散臭い。

ルネサンス期にこの両性具有説は、秘教主義の急進的で周縁的な思想傾向において主流になった。

実に胡散臭い。第一『急進的で周縁的な思想傾向において主流』の意味が微妙にわからない。非情に胡散臭い。とはいえこの胡散臭さは、この本自体が胡散くさい所為なのか、それとも当時の中世ヨーロッパが胡散臭かったか所為なのかは今一はっきりしない。糞の役にしか立たない本を読んでいたときも思ったが、昔のヨーロッパというのはやたら胡散臭いのでこのように書くのが正解なのかもしれない。MMRがまともな人達に見えてくるぐらいに『アダム両性具有説』で狂喜乱舞するのが当時のヨーロッパ。そしてその極端な―あくまで極端ではあるが―例の一つとして今から引用するのがかの有名な*1アントワネット・ド・ブリニョン嬢が掲げた以下の言説。一体彼女に何があったんだ。

「口にするのもはばかられる動物的な器官とは違って、永遠の命の中でわれわれの体が再生されるように、それは作られていた。それについてどう説明したらよいだろうか。あの部分には、顔と同じく、鼻に似た組織があって、それこそ素晴らしい匂いや香りの源であった。人間もそこから出てくることになっていた。自らの内に人間のすべての原理を備えていたのである。腹の中には、小さな卵の生まれる管と、その卵を受精させる液体がいっぱい入った別の管があった。そして神への愛のうちに興奮を覚えると、神をたたえ、愛し、崇めるために自分以外の人間を造りたいという欲求が起こり、神の愛の火によって、ひとつのないしは複数の卵に絶妙にこの液体がふりかかる。するとこの卵は受精して、しばらくしてから、卵型をした管を通って出ていき、まもなく完全な人間となる。こうして永遠の命の中で、無限に聖なる世代が作られる。それは罪を犯したために女が作り出すようになった世代とは全く別のものである。神が男から、すなわちアダムのあばら骨から作った女は、この卵を入れておく臓器を持っていて、人間は女の中でもう一度生まれるのである。」

アダムのあばら骨から云々については、まあ聖書に書いてあるみたいなんでわかるとしても、他は全部彼女が宇宙から電波神の言葉を受信した結果らしい。新説を打ち立てるにあたって興奮する気持ちはわからないでもないが、「“絶妙に”この液体がふりかかる」は頑張り過ぎだ。頑張り過ぎてもはや常人がついていけるレベルを完全に超えている。大体『素晴らしい匂いや香りの源となっている鼻に似た組織』を想像できるか?できないだろ普通。「鼻に似た組織があって」じゃねーよ。まずそこからわからないって話だ。誰か説明してくれ。

*1:初めて知った