闇の奥①

闇の奥 (岩波文庫 赤 248-1)
太古の昔*1、fat lux(光あれ)と誰かが言って光が出来たとするならば、それ以前は闇一色だったわけだ。つまり世界の土台は闇。断じて光じゃない。黒単コントロール万歳。現に、太陽の輪を使った自転車発電が毎日毎日飽きもせずせっせと行われているにも拘らず、全体としての宇宙は未だ真っ暗闇。「闇とは原初だったんだよ」「なんだってー!?」。そんな『闇』の―それも『奥』とくればそれこそ始まりを暗示し、従ってこの『闇の奥』なる小説が原初的な自然や人間活動を扱っているのはそれこそ道理と言えるだろう*2

―前置終了―

こ・れ・が陰鬱なんだ。三章構成のうち二章までは確実に陰鬱。三章に入りキーパーソン『クルツ』が登場してやっと…と思ったらやっぱり陰鬱。実に僕好みではあるが流石に少々疲れるよー。大体あれだけジャングルにおける唯一の偉人として『クルツ』という雄弁な存在を散々アピールしておきながら、頑張って会いにいったら既に今わの際二歩手前。まともに喋りやしねぇ。最後の瞬間一歩手前まで徹底してクルツの輪郭しか書かないコンラッド大先生からは信念すら窺える。一体なんなんだお前らは。だが、それまで輪郭だけであったがゆえに、クルツ最後の言葉が画竜点睛となりクルツ或いはこの作品そのものが見えてくる…かどうかは定かではない*3
この作品を考えるに当っては、巷によくある「自然(or野蛮)」と「文明」のニ項対立で捉えるのが一番楽かもしれないが、闇の『奥』とまで言った作者に敬意を表してやめておく。ニ項対立不成らず。この作品はできればもっと包括的に味わいたい。この、見たものにしかわからない世界とやらを。見たから偉い、偉くないではなく単純に共有できない世界。ある意味当たり前のことだが…皆共有できるつもりなんだろうなあ。情報化社会ウェー。


・何時かもう一度読んでもう一度書きたい。よって①。②は多分二年後。

*1:重用表現注意

*2:僕の思い付きを信じない方がいい

*3:自信ないので逃げた