アイシールド21 

最近のアイシールド21に関して如何思われます?

 「1周回って空気なので特に面白くもなければこれといって不快でもない」と言えば2秒で終わるのですが、それだと拍手者がかわいそうだということで一応頑張ります。記憶が相当に怪しいので、勘違いがあったらすいません(漫画喫茶で読み直す気はさらさら〜ない構文)。そうですねぇ。僕の印象としては、帝黒=劣化カンピオーネ*1、かな。いや、カンピオーネ自体伝説的に素晴らしいという程でもないんだけど、その劣化品というイメージ。神龍寺や王城を押しのけて直球のラスボスを勤める以上多少はチートなぐらいで丁度いいんだけど、そのチートが微妙なチート。わかりやすく書くと「帝黒って作中で言われてるほど理不尽に強く見えない」。何故か? それは、「物語」と「勝負」が完全に分離されてしまったが故に生じた歪みに起因します。「します」って断言できるほど読み込んだ覚えがないけどさ。いいのか? いいんだ。

 つまりですね。帝黒学園って登場人物のサプライズ設定がチート・ラスボスとしての強さ描写にほとんど寄与していないんですよ。例えば、先のキャプ翼Vで、サッカー界屈指の名将ジョアン監督の指導でパワーアップした新田には一応の説得力があった。名将の指導=素質開花、量的な過剰はともかくこれは基本的に理解できる話だと思う。しかしだ。頭を返して眼球防御。『本庄』鷹という設定に果たして強さを感じられるだろうか。本庄さんだよ? 親子鷹みたく扱われてるけど、この人って元野球選手だよ? この人のマンツーマンでアメフト強くなるわけないよ。てか、本庄さんだよ? 普通なら積極的になかったことにしたくなるような謎設定に輪をかけてきたんだよ。これ、例えれるなら「プロ野球を引退したあと東日本卓球協会の会長となった守備の名手小坂の息子にして草野球会を守備で制覇した天才カットマン」とかそんなんだよ? 直感的に強そうな気がする? しないよね。ピンとこないよね。むしろピンときたらおかしいわけですよ。てか、誰だよコイツ。

 次、小泉花梨。「男子アメフトに参加する女性アメフト選手」と言った時点でまず第一義的に「弱そう」という、ラスボスとしてのマイナス・イメージがどこからともなくわいて出てこざるをえないわけですが、なぜかここにきて女性選手。自分で自分のハードルを上げるという意味では稲垣先生はチャレンジャー。なにせ、女性選手を最強クラスとして描かなければならないのですから。で、今回強化人間を予想していた僕ですが、どうやら僕の予想は甘かった。「『アメフトが特に好きでもない』『ド文科系の』女性選手」。女性選手という記号を使った時点で「強そうなイメージ」へのハードルを散々上げたにも関らずまだ上げますか稲垣先生。もっとも、ここまで弱そうな設定をラスボスチームの一角として起用する場合、「華奢な身体」に「チートな特殊能力」を付与する事でギャップによる強さ演出を行うという可能性も確かにないとはいえません(バトル漫画にありがちなチビが怪力無双とかそういうの)。とある理由によりスポーツ漫画ではまず使われない手法ですが、もしそれならば一縷の望みも……

「味方が取りやすいボールを投げれる」
「敵のタックルを避けるのが上手い」

 君は不動峰の桜井ですか。「トップスピンをかけるのが上手い」とかと同レベルですか。そして、こんなのに負けたのか。日本全国から選手を引き抜きまくったチート学校・帝黒学園の2〜6軍はこれに負けたのか。いや、稲垣先生冗談ですよね? 後でもっとチートな能力出てきますよね。眼力でフィールドを凍らせるとかそのぐらいはできますよね? まぁ、やったところで稲垣先生の嘘つきセンスでは、許斐先生のようには決して面白くはならない*2と思いますが、それはさておき小泉花梨の何が強いのかが本気でわからない。「男子アメフトに参加する女性アメフト選手」という記号の持つ華奢なイメージを払拭してラスボスとしてふさわしいレベルに昇華するには明らかに力不足。一応、カタログスペックに関しては、ド文化系の女子選手としては異常という結果がどっかの調査ででているらしいのですが、だからといってラスボスとして強そうに見えるかとはまた別問題ですよね。この漫画って0.1秒とか絶対的なパワーとか数値にやけに拘っているだけに、男子選手を超えるビスケ並みのカタログ・スペックでもなければいかにチートでも作劇上の意味がない。しかも駄目押しとばかりに、花梨が女性選手であることの諸問題が軒並みスルー*3。いや、そこは作劇上美味しい部分なんだから、そこを描く気がない或いはこの局面では描きづらいなら最初から描かなきゃいいじゃない。ギャー何故生まれてきやがった。そんなに出したいなら関東の1回戦辺りで出せばいいじゃないか。いや、それでもハードル高いんだけどさ。なぜ稲垣先生はこんなリターンの少ないリスクを進んで負うんだ? ある意味チャレンジャーっちゃチャレンジャーで、そういう意味では格好いい、のか?

 ラスト。大和。最近名前覚えた。大和。苗字なのか名前なのかはいまだにわからない。で、この大和。こいつだけは「真のアイシールド21」と間違いなくラスボスにふさわしい設定を持っているんだけど、意図的にやってるとしか思えないほどスゲー弱そうに見えるという謎。相方はシューティングスターというかアークライトフィフスというか明らかにチートな技を持っているというのに君はどうしてそうなんだ。ぶっちゃけ後でナトゥレーザが出てくるんじゃないかと読者に思わせるくらいに弱そうな彼。決勝で相手を舐めてかかったところチビに抱きつかれてたので必死な顔で振りほどいたってどこの1回戦ボーイですか。彼はガオウにどうやって勝つというのだ。

 まぁ、結局は勝者となるべき泥門が弱いのが全ての発端なんでしょうけど。適材適所でセコく勝つチームの筈が何時の間にか「攻撃力だけなら関東最強だ!」とかなってたけど、中身はあんま変わってない。この辺、青学とか明訓とか全日本ジュニアユースとか便利だったわけだなぁ。相手がチートになっても十分対抗できる。青学とか、デビルと皇帝と神の子と詐欺師と猛獣使いを擁するチーム相手に勝ちきってるもんな。ひれぇーや全国。

追記:思考実験の場としてわりと楽しんでいるんじゃないか、という気がしてきた。少なくとも「反吐が出るぜ」とかは全然ならない。なんだ。じゃあいいじゃないか……いいのか?

*1:キャプテン翼Vのラスボスチーム。例として、誰がわかるというのだ誰が。

*2:もっとも、これは稲垣先生のセンスが低いというよりは、許斐先生のセンスが異常であるということを意味する。

*3:小泉花梨郎とか。