期待と不安というよりは期待が不安

範馬刃牙 13 (少年チャンピオン・コミックス)

 ここ最近の、愚地克巳の持ち上げ方は正しい。仮にもあの原始人とやりあう以上、親父の張り倒しぐらいはサクっとやらねばならんという点において正しい。一度落として現在地を明確にするという意味で「ふ、ふぅぅぅん」と一回軽く挫折させるのも正しい。そのままではとても勝負にならぬからと烈海王と修行させるのも正しい。バキにサクっと無我られたことがすっかりなかったことになっている克巳オリジナルこと『マッハ突き』を持ち上げるのも多分正しい。今思えば烈海王のアレはセコ技だったわけでそういう意味でも多分正しい。だが、正しければ正しいほどに、僕らは不安と、ある種の期待を同時に抱くのだ。僕らは知っている。僕らは、ブチ切れた時のイタガキという名のキチガイがいったいなにをやらかすかについて知りたくもないがよく知っている。そう、よく知っている。知りすぎるくらいによく知っている。事実、この克美ウォーズの発端は、範馬勇次郎という名の究極にして至高のジャガッタ量産機なわけで、いついかなるタイミングで愚地克巳は横入り反動蹴速迅範馬砲を喰らうのだろうか、或いはギリギリのラインで回避しちゃったりするのだろうか……とか考えるとすげぇスリリングですよね。最低でも、5分5分の確率で後ろからジャガラれると思うんですよ。それもわけのわからん闘争理論がもれなくオマケでついてくるわけですよ。天内とか、柳とか、あの辺が軒並みジャガられた時のように、シュートコースに龍が見えるわけですよ。そう考えると超スリリング。おそらくはそれをやった瞬間、ゲリラ的に生き残っていた僅かな処女ファンが剃刀レターをあの狂人に送りつける展開が容易に予測されるのですが、それを含めて楽しみっちゃ楽しみです。少なくとも、バキが蟷螂やら筋肉やらと戦っていた時よりは。「いいのか、それで」「いいんだ。うん」