僕の考えたアイシールド21

 米ソ間冷戦の傷跡。『名古屋の壁』によって東西に分断された敗戦国・日本では、年に2回アメフトでの交流だけが許されていた。だが、その交流は、交流と呼ぶには痛々しすぎた。『西高東低』。圧倒的な経済力で関東国の選手を関西国へ亡命させ、飼い殺しにする帝黒学園の強さは圧倒的だった。その強さはまさに歩く近代兵器。その戦闘力の前には、東の最強にして、「無敗の神」とまで大衆に謡われた神龍寺ナーガですら、毎年完敗する程であった。無論、情報操作によって、東の大衆には毎年神龍寺ナーガの勝利だけが伝えられてはいたが、大衆が真実を知るのは時間の問題だった。このまま東は西に蹂躙され、関東国の人々は希望を失っていく一方なのだろうか。否。この現実を憂う、憂国の士が1人いた。時の関東アメフト協会理事長である。
 彼は、関東アメフト界の戦意高揚を促す為、徹底した実力至上主義を打ち出し、その結果、関東アメフト界は未曾有の戦国時代に突入する。筋肉痛が全身を痛める中、『下克上』を果たしたのは、悪魔の頭脳を持つとまで言われた策士・蛭魔妖一率いる泥門デビルバッツと、西のアメフトプレイヤー(資本主義の豚)撲滅の為に開発された決戦兵器GX−9900コードネーム『峨王力哉』を擁する白秋ダイナソーズだった。関東国最強を決める闘いは、蛭魔妖一がほんの数分間退場するという未曾有のアクシデントの末、泥門デビルバッツが辛くも勝利、その実力を天下に知らしめるが、『名古屋の壁』は尚も厚かった。なんと関西国の王者・帝黒学園は、『真の眼球防御弐十壱』を噂される大和と、関東国最強の射撃手を4軍に落とす程の女性射撃手・小泉花梨を擁していたのだ。特に小泉花梨はムラサメ研究所で養成された所謂強化人間であり、アメフトボールを思念波で自由自在に操ることを可能とした*1、恐るべき人造兵士だったのだ! 東日本国と西日本国、『名古屋の壁』によって分断された日本民族同士が、今、深い憎しみの連鎖に繋がれていく……

 こういう話だったなら辻褄があうのではなかろうか。多分。こんな感じなんだよあの世界は。

*1:通称:ファンネル・ビーム