遊戯王GXが僕らに教えてくれたこと【1】

 総括。ほら、最終回近いしさ。客寄せだ客寄せ。


 途中で挫折するかもしれないがその時は優しく見守ってくれたまえ諸君。まずは1期から。1期のGXに見所はあまりない。いや、万丈目サンダーの誕生とかなくもないんだが、全体的には可もなく不可もなく感が強い。しかしある程度の知名度は獲得した。これはスタッフ的には成功であろう。長期放映が前提なのだ。いきなりフルバーストしていては身が持たない。そういう意味では成功である。正直、後で見た僕からすると本当に退屈なんだが、まぁ、いいんじゃねぇのっていう。が、スタッフは何気に苦労していたのかもしれない。何がというとデッキについて。1期においては、カードデザインがかなり終わっている。別段コンセプトのない機械体操サイバーガールや住む世界間違ってるよと言いたくなるビークロイドもそうだが、主人公の十代操るE・HEROが今思えば中々の問題児だったのだ。手探りな時代のお話。

[E・HEROの矛盾]
1弱小ヒーローが融合によってスーパーヒーローとなるのが初期のコンセプトだった筈だが、遊戯王における融合モンスターの基本原則は「素材が重くて強い方が完成品も強い」。結果、セイラーマンやスチームヒーラーといったかわいそうな子が多数生み出されることとなり、融合素材の貧弱っぷりは単なる弱点でしかないという結果に終わる。折角バブルマン出して2ドローしても、そこから生み出されるのがテンペスターではあまり意味がないというわけだ。
2主人公に何度も決闘をさせる都合上、メカニズムとしてのE・HEROは、バリエーション・アドヴァンテージの思想を取り入れつくられた筈だった。しかし、手札を一気に消費する融合デッキに柔軟な対応性を持たせるなどは愚の骨頂。結果、「困った時はフレアウイングマン或いはシャイニングフレアウイングマンによる1キル一点突破」という身も蓋もない戦術が頻繁に採用されることとなる。
3主人公である以上それなりに長々と決闘をしなくてはならない。しかし、融合デッキで長期戦をやるのは無駄があまりに多すぎる。結果、バブルマンを筆頭としたGX驚異のメカニズムが編み出される。例えば、序盤の無駄融合を帳消しにするミラクフュージョン
4纏めるとこうなる。「カードゲームアニメの主人公として毎回違うカードで強敵と渡り合っていけるよう迷路融合を採用してみたが、その迷路の出口は、『ドキドキ☆ドローで逆転☆1キル無双』に繋がっていた」。経緯を考えるとマッチポンプ

 理想と現実のギャップの帳尻会わせに苦心していたことが伺える。1期の最終戦である十代VSサイバー流はその特徴が顕著に出た試合となった。ガチ1キルの申し子サイバー流の容赦ない攻撃に対応するべく十代もまた融合の本来的な帰結、即ち「収束荷電粒子砲」を志向。結果、攻撃力が膨大に膨れあがっていく。これは【E・HERO】即ち【融合】が、「結局のところ一番パワーのある融合体1点張りで1キルした方が効率的だ」と結論づけられたことを意味している。手札融合の完成形は、デュエルを終わらせるもの、即ち『1キル』に他ならなかったのだ。これは問題である。なぜなら、このままいくとアニメが事実上終わってしまう危険性を有しているからだ。そこで、新たなライバルが生み出された。そしてそれこそが、一々次のターンまで待つイケメンことエド=フェニックスの【D−HERO】だったのだ。彼は、単調な決闘に堕する方向に加速していた十代を一回遅攻で叩きのめす役目を背負っていた。多分。当初は、多分。

 キャラについて。デッキに比べるとキャラは割合に成功していたようだ。万丈目サンダー三沢大地がじょじょにキャラ立ち。そしてそこに「あの服装はぶっちゃけ羞恥プレイ以外の何物でもない」天上院明日香が続く格好。しかし、1期の時点で彼らの悲哀は始まっていた。セブンスターズ編、一見するとみんな頑張っていたかのように見える。だがよくみると、万丈目の相手は黒蠍盗賊団、三沢はタニヤに凹られ、明日香に至っては「最近出番が多いと思ってたらアムナエルに瞬殺された」、と全然強敵と絡めていない。実はいっつも蚊帳の外。この傾向は最終回に至るまで変わらない。彼らは何時も、世界(≒デュエル)の存亡には絡ませてもらえなかったのだ。脇役の知名度が上がったにも関わらず、脇役を出し渋るこの傾向の意図は不明だが、もしかするとデュエルを考えるのが面倒だったのかもしれない。或いは、主人公が空気化することで長期放映に支障がでる、それを恐れたのかもしれない。