丸太

彼岸島(19) (ヤンマガKCスペシャル)


山田悠介原作のどうしようもない漫画「リアル鬼ごっこ」をポジティブな意味で先鋭化していったら或いはこんな素敵な漫画になるのかもしれない。その作品性からは、圧倒的な知識の不足が感じ取れてしまうが、そんなことはこの際どうでもいい。丸太がそこにあれば僕等愚民は拍手喝采を投げかける…そう、丸太なんだ。この世に鈍器ほど魅惑的な武器は無く、そして鈍器の最高峰と言えば、言うまでも無くそれは丸太丸太丸太。超丸太丸太新世紀。嗚呼、素晴らしき丸太漫画。*1

この作品で僕が最もハラハラしたシーンもやはり丸太絡みだった。主人公とその兄貴が薙刀・日本刀・吸血能力・ゾンビ兵…等ありとあらゆる手を尽くして闘った末に二人仲良く二階から落下。このまま落ちれば二人とも助からないという危機的状況。その瞬間兄弟共通の師匠が落下中の二人に向かって差し出した助け舟こそが、他ならぬ丸太だった。「ここで丸太!?」と「ここで虎王!?」の如く間違った感想を漏らしてしまったが、しかし丸くて掴み難い丸太では兄弟を助ける事ができなかった。丸太が失敗した!あの丸太が!!その衝撃は計り知れなかった。第一巻の時点から万能兵器として描写され、事あるごとに主人公チームを救ってきたあの丸太が失敗したのだ。確かに普通ならば「落下する二人もの人間を一本の丸太で受け止め切るのはチョット無理が有り過ぎるよな」等と反応するのが正しいのかもしれない。だがこの漫画は彼岸島なのだ!丸太こそが「真理」となる彼岸島なのだ。その空間において、「丸太様」が失敗したことの意味は予想以上に大きかった。だがこの先の話においては、丸太が直接敗北する驚天動地的な話すら存在するという狂気。それ故、僕の読書生活は未だ予断を許されない状況に置かれていると言っても決して過言ではないであろう丸太。

「丸太も武器として結構使えるじゃないか」「そんな小枝でどうするのだ?*2」「これは…いい丸太だな*3」―彼岸島第180話「丸太」より抜粋―

*1:丸太以外の諸要素も何気に好きだったけどな。

*2:相手の持つ丸太をあざ笑った発言。

*3:大木を引っこ抜いた上での発言